「うなぎって養殖できるのに、なぜ高いの?」「完全養殖はできないの?」——通販でうなぎを調べていると、こうした疑問が浮かびます。
仕入れ研究を通じて養殖の仕組みを調べたこうなぎが、うなぎの養殖の流れを整理しました。
うなぎ養殖の大きな特徴
うなぎ養殖の最大の特徴は、稚魚(シラスウナギ)を人工的に生産できないことです。
他の魚介類(鮭・ブリ・マダイなど)は親魚から採卵して孵化させる完全養殖が確立されています。しかしうなぎは生態的な謎が多く、産卵・孵化の環境を再現することが非常に難しい。
そのため現在の養殖うなぎは、すべて海から採捕した天然の稚魚を「育てる」ところから始まります。「稚魚の採捕量」が養殖量の上限を決めるという、他の養殖業にはない構造が高価格の根本原因です。
シラスウナギとは
シラスウナギはうなぎの稚魚で、孵化した後に海から川へ遡上してくる段階のものです。体長5〜6cm、体は半透明で「シラス」に似た外見からこの名前がついています。
採捕時期は秋〜春(主に10月〜翌3月)で、河川の河口付近や沿岸で採れます。採捕には各都道府県の漁業権が必要で、乱獲を防ぐための漁期・採捕量制限が設けられています。
養殖の流れ:シラスウナギから出荷まで
シラスウナギが採捕されてから食卓に届くまでの工程を、順を追って見ていきます。
① シラスウナギの採捕・仕入れ
川の河口などで採捕した稚魚を養殖業者が購入します。シラスウナギの価格は年によって大きく変動し、不漁年には1kgあたり100万円を超えることもあります(1kgあたり3,000〜6,000尾程度)。
② 小割池での初期育成
採捕したシラスウナギを養殖池へ移し、最初は「小割池」と呼ばれる小さな池で一定サイズになるまで育てます。この初期段階が最も繊細で、管理が難しい時期です。
③ 養殖池での育成
成長に応じて大きな池へ移します。餌(主に魚粉ベースの配合飼料)を与えながら出荷サイズ(1尾150〜250g程度)になるまで育てます。
育成期間は条件によって異なりますが、一般的に1〜1.5年程度かかります(台湾産は温暖な気候を活かして国産より短い場合がある)。
④ 選別・出荷
出荷サイズに達したうなぎを選別し、蒲焼・白焼きに加工して出荷します。加工(捌き・素焼き・蒸し・本焼き・タレ付け・急速冷凍)まで一貫して行う業者もあれば、分業しているケースもあります。
国産と台湾・中国産の養殖方法の違い
| 項目 | 国産 | 台湾産 | 中国産 |
|---|---|---|---|
| 主な養殖池の形式 | 温室プール型が多い | 露地池が中心 | 温室型・密閉型が多い |
| 放養密度 | 高め | 国産の1/10程度(低い) | 高め |
| 育成期間 | 約1〜1.5年 | やや短い | 条件次第 |
| 水温管理 | 温室で年間管理 | 亜熱帯の自然温度 | 多様 |
完全養殖はなぜ難しいのか
うなぎは生活史の謎が多い魚です。産卵場所がマリアナ諸島付近の深海と推定されていますが、実際の産卵シーンが観察されたことはほとんどありません。
水産研究・教育機構が2010年に世界初の完全養殖(孵化→成魚→採卵→再孵化)に成功しましたが、孵化した仔魚に与える餌の開発が難しく、大量生産・商業化の段階には至っていません。今後10〜20年で実用化の可能性があるとされていますが、現時点では不確実です。
まとめ
- うなぎ養殖は天然稚魚(シラスウナギ)を育てるもので、完全養殖は未実用化
- シラスウナギの採捕量が養殖量の上限を決めるため、供給が不安定・高価になる
- 育成期間は約1〜1.5年。台湾産は露地池・低密度養殖が特徴
- 完全養殖の商業化が実現すれば、価格・安定供給ともに大きく改善する可能性がある
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